広報誌みほん
51/60

覆われた砂され礫き層や、溶岩層と溶岩層の間を満たし、伏流水となり、15年から20年の歳月を経て、溶岩層の末端から湧き出ると考えられている。都留市内には、上水道に使用しているだけで、富士山の伏流水が日に約8千㌧も湧き出ている。特に、環境省によって「平成の名水百選」に選定された十日市場・夏��狩��湧水群には、湧水地が10カ所以上ある。水温は年間を通して12、13度に保たれ、水量も豊富なことから、伝統野菜である水掛菜の栽培や、養魚場、わさび田などで利用されている。水掛菜は、都留市や隣の富士吉田市、また静岡県御殿場市、富士宮市など富士山周辺で、水田の裏作として作られている。富士山の湧き水をかけ流しながら育てることから、その名が付いたと言われる。明治の中頃、都留市の農家が、富士山の湧き水が冬も凍らないことに目を付け、水をかけ流して菜っ葉を栽培することを思いついた。今では流通が良くなり、冬でも野菜が手に入るが、昔は冬場の青物野菜は貴重だった。寒さの厳しい地域ではなおさらだ。そのため、この方法はすぐに普及。多くの農家が、収穫の終わった田んぼに畝��を作って種をまき、そこに湧き水をかけ流しで引き込み、魚を養い、わさびを水掛菜を栽培するようになった。富士吉田に青果地方卸売市場が設立された昭和35年からは出荷も始まり、生産が本格化。昭和60年頃までは市内各地で盛んに栽培されていた。の高齢化もあり、栽培面積、生産者ともに減少。現在は十日市場・夏狩地区で約20軒が栽培するのみとなっている。が、地元ではまだまだ人気の野菜。各家庭では塩で漬け込んだり(水掛菜漬)、おひたしや炒めもの、胡麻和えなど、多くの料理に使われる。都留では特に正月の雑煮に欠かせない食材であり、年末年始にかけて出荷のピークを迎える。た感じで、葉はカブに似ている。ビタミンやミネラルが豊富で、ビタミンCはキャベツの2倍含まれているという。湧き水をかけ流して栽培することで、葉や茎などが凍らず青々とし、アクが少なく、クセが無いのが特徴。霜が降りる度に甘みが増すと言われ、12月下旬から2月下旬まで収穫が続く。その後、宅地化が進んだ上に農家水掛菜は小松菜をやや大ぶりにし富士山から流れ出る清らかな湧き水は、水掛菜を始めとした農業以外にも、川魚の養殖やわさび栽培など、さまざまな恵みを、そこに暮らす人々にもたらしている。十日市場・夏狩地区には、湧き水を利用した養魚場が4カ所あり、ヤマメやニジマスなどを飼育している。その一つ、十日市場の柴崎養魚場に、都留ライオンズクブ のラ中野清会長が案内してくれた。以前は自分でも水掛菜を作っていたという中野会長は、育てる湧水群都留では「柵売り」という水掛菜オーナー制度もあり、畝1列をまるごと買って、好きな時に自分で収穫に来る人も多い夏狩地区の長慶寺境内の湧き水に自生するバイカモ。水温が高いせいか、冬でも花を咲かせていたLION2017年3月号51

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る